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ブログ 2014/5/9
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銅脈先生[古典文学]
投稿日時:2014/05/09(金) 08:38
老娼
銅脈先生
誓莫買老娼, 慰人油如泉。 身代振棒後, 初覺多露懸。
老娼(としま)
誓(ちかっ)て 老娼(としま)を 買ふ 莫(なか)れ,
人を慰(たら)して 油 泉の如し。
身代 棒に 振(ふり)て 後,
初めて 覺(おも)ふ 多露に 懸(かか)りしことを。
*****************
※銅脈先生:狂詩家。寶暦二年(1752年)~享和元年(1801年)。江戸時代後期の京都の人。本名は畠中頼母。号して觀斎。銅脈先生、滅方海、太平館主人、片屈道人などと狂号した。これら狂詩の用語は、日本語の語彙を漢語風語法で、配列させて作っている。押韻はしているが、平仄には拘っていない。
※老娼:としまの娼婦。この作品は『太平遺響』卷三にある。
※誓莫買老娼:年増の女性は、絶対に買ってはいけない。 ・誓莫:絶対に……するな。 ・誓:誓って。 ・莫:な。なかれ。禁止。 ・買:買う。ここでは娼婦を買うこと。 ・老娼:としまの遊び女。年嵩の女性の遊女。
※慰人油如泉:人をたらして、油は泉の如く湧き出る。 ・慰人:人をたらす。男性を愉しませる。 ・油:滑らかな状態。 ・如泉:湧き出るようである。
※身代振棒後:家の財産を使い果たした後。 ・身代:財産。 ・振棒:棒に振る。無駄にしてしまう。駄目にしてしまう。 ・後:あと。
※初覺多露懸:やっと「多露」病に罹っているのが分かった。 ・初覺:やっと分かった。初めてわかった。 ・多露:性病名か。 ・懸:かかる。病気になる。罹患する。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「泉懸」で、平水韻下平一先。次の平仄は、この作品のもの。
●●●●◎,
●○○○○。(韻)
○●●●●,
●●○●○。(韻)
銅脈先生
誓莫買老娼, 慰人油如泉。 身代振棒後, 初覺多露懸。
老娼(としま)
誓(ちかっ)て 老娼(としま)を 買ふ 莫(なか)れ,
人を慰(たら)して 油 泉の如し。
身代 棒に 振(ふり)て 後,
初めて 覺(おも)ふ 多露に 懸(かか)りしことを。
*****************
※銅脈先生:狂詩家。寶暦二年(1752年)~享和元年(1801年)。江戸時代後期の京都の人。本名は畠中頼母。号して觀斎。銅脈先生、滅方海、太平館主人、片屈道人などと狂号した。これら狂詩の用語は、日本語の語彙を漢語風語法で、配列させて作っている。押韻はしているが、平仄には拘っていない。
※老娼:としまの娼婦。この作品は『太平遺響』卷三にある。
※誓莫買老娼:年増の女性は、絶対に買ってはいけない。 ・誓莫:絶対に……するな。 ・誓:誓って。 ・莫:な。なかれ。禁止。 ・買:買う。ここでは娼婦を買うこと。 ・老娼:としまの遊び女。年嵩の女性の遊女。
※慰人油如泉:人をたらして、油は泉の如く湧き出る。 ・慰人:人をたらす。男性を愉しませる。 ・油:滑らかな状態。 ・如泉:湧き出るようである。
※身代振棒後:家の財産を使い果たした後。 ・身代:財産。 ・振棒:棒に振る。無駄にしてしまう。駄目にしてしまう。 ・後:あと。
※初覺多露懸:やっと「多露」病に罹っているのが分かった。 ・初覺:やっと分かった。初めてわかった。 ・多露:性病名か。 ・懸:かかる。病気になる。罹患する。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「泉懸」で、平水韻下平一先。次の平仄は、この作品のもの。
●●●●◎,
●○○○○。(韻)
○●●●●,
●●○●○。(韻)
江戸の漢詩[古典文学]
投稿日時:2014/05/09(金) 08:26
江戸の漢詩
古文辞から狂詩
「屁臭(へくさい)」…大田南畝の狂詩。
江戸時代中期から後期にかけて活躍した文人大田南畝の狂詩です。
「屁臭(へくさい)」
一夕飲燗曝(いっせきかんざましをのむ)
便為腹張客(すなはちはらはりのきゃくとなる)
不知透屁音(しらずすかしべのおと)
但有遺矢跡(ただうんこのあとあり)
※燗曝(かんざまし)=燗をしたものの、冷めてしまった酒。
※矢=屎、糞便。「遺矢(いし)」で糞尿をもらす意。
意訳:ある日の夕方、“かんざまし”の酒を飲んだら、お腹が張って具合が悪くなった。そこで音も無くスカシ屁をしたつもりが…、気づいたらウンコの跡があった。
この作品の元になった詩が唐詩選にあります。裴迪(はいてき)の「鹿柴」です。
ーーーーー
「鹿柴(ろくさい)」
日夕見寒山(にっせきかんざんをみる)
便為独往客(すなはちどくおうのきゃくとなる)
不知松林事(しらずしょうりんのこと)
但有麏?跡(ただきんかのあとあり)
※麏?(きんか)=鹿の類。
(意訳)夕方、殺風景な山を見て、じっとしていられなくなって独り山中に分け入った。松林に何があるのか知らないが…、気づいたら鹿の足跡があった。
これはまた、なんとすばらしいパロディでしょう!(笑) 両方を比べてみて、思わず感動せずにはいられません!
裴迪の詩の韻律、リズムを生かしているのはもちろんのこと、「鹿柴(ろくさい)」を「屁臭(へくさい)」、「寒山(かんざん)」を「燗曝(かんざまし)」と、読み下したときにもきっちりシャレになっています。元詩の「麏?(きんか)」を「遺矢」に変えて「うんこ」と読ませているところなんか最高です。
大田南畝全集によると、この詩には添え書きがあります。
○西の町のかへり、とうの芋でかんざましをのみ、途中の勝負少々利運をゑて、壱分の女郎を買に、二朱ほどの飯をくひ、腹のいゝあまりにうら心があり、かいばなしにはせんきのせいやら一すかしすかしければ、どうせうね、うんこの跡あり。
ハハハ…、『どうしようね』って言われてもねぇ。うんこの跡は拭くしかないんじゃないのー(大笑い)
ーーーーー
大田南畝(蜀山人・寝惚先生・四方赤良など多数の号あり)は狂歌師、戯作者として有名なほか、狂詩にも文才を発揮しています。特に下ネタや色ネタにおもしろい作品が多いのですが、時代背景の違いもあって解釈するのは難しく、私にはわかったようでわからないものばかりでした。この詩はすこぶるわかりやすくて笑えます。
※参考:大田南畝全集巻1(岩波書店刊)
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