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古典文学

アダム・カバット著  柏書房  『妖怪草紙 くずし字入門』

投稿日時:2014/05/10(土) 01:11

http://www.chinjuh.mydns.jp/libro/0001.htm より

アダム・カバット著 
柏書房 2300円+税
 『妖怪草紙 くずし字入門』
 
 
----帯より引用----
 江戸の草双紙に登場する愉快な妖怪達をナビゲーターとして楽しく読み進めると、あなたはくずし字解読の達人に。
 カバット先生秘伝の「ステップアップ方式」で基本文字150を確実に修得できる、ユニークなくずし字入門書。 『妖怪草紙 くずし字入門』表紙
 ここでいう「くずし字」は、変体仮名とよばれているものです。
 かつて日本には文字がありませんでした。えらい人たちは漢文(つまり中国語)で日本語を書き表そうとしましたが、漢文では日本語の発音を記録することはできません。

 たとえば、Aさんが
「わたしは日本語が好きなんです!」
と、言ったとしましょう。
 ところが、古代日本には文字がなかったので、中国の文字を使って、中国語でAさんの言葉を書きました。
「我愛日本語」
 これを、Aさんを知らないBさんが読んだとします。BさんはAさんが男なのか、それとも女なのかさえ知りません。
「われにほんごをあいす」
「おれはにほんごがすきだ」
「あたしはにっぽんごがすきです」
「おいらはにほんごがすきなんだもんね」
  ・
  ・
  ・
  ・
などなど、「我愛日本語」にあたる日本語はたくさんあるので、Aさんがどんな口調で話したのか、Bさんにはわかりません。

 そこで考え出されたのが日本語の発音を中国の漢字で記録する方法でした。

 和太之波仁保无己加寸機奈无天寸
(わたしはにほんこかすきなんてす)

 こんなふうに日本語の発音をあらわすための漢字を「万葉仮名」というのは、学校でも習うとおりですね。万葉仮名を書きやすいようにくずしていったものが「ひらがな」「カタカナ」のもとになりました。

 ところで、ひとくちに「ひらがな」や「カタカナ」といっても、現在のかたちに定められたのは明治時代のことです。それ以前の仮名はもっとバリエーションが多く、たとえば「き」と読ませる文字だけでも「機」「木」「起」「喜」「支」などをくずして作った仮名が使われていたそうです。つまり、こういった文字を変体仮名と呼ぶわけです。

『妖怪草紙 くずし字入門』練習問題  左の写真は『妖怪草紙 くずし字入門』の一部です。ニューヨーク生まれのカバット先生は、わたしたちが忘れてしまった江戸の仮名文字を、当時さかんに作られた妖怪絵本を教材にして楽しく教えてくれます。
 初級の練習問題ですが読めますか?

↓答えは...
--------------------------
 べんとうをもってきたが
 もうしまいな
 さるか
--------------------------

 絵をクリックすると、ほかの問題も見られます。

 江戸時代には妖怪が登場する面白い絵物語が沢山作られました。今でいうと水木しげる先生の妖怪漫画のようなものでしょうか。上に掲載した写真はそういった妖怪絵本の一部です。このページにたどり着いた人は、妖怪が大好きという人が多いと思うのですが、江戸の妖怪絵本を読めたらいいなと思ったことはありませんか?
 江戸時代の本なんか手に入らないし、と思うかもしれませんが、妖怪について書かれた解説書の挿絵として、江戸の妖怪絵本が紹介されていることがあるでしょう。絵と一緒にミミズがはった跡のようなくずし字で説明が書いてあるのを見たことがありませんか。実はそのくずし字こそ変体仮名で書かれたものなのです。これ、読めるとけっこう楽しいんですよ。活字で説明されていない重要なことがかいてある場合もあります。

 前から変体仮名が読めたらいいなーと思っていたのですが、そういうものの入門書はやけに専門的で難しかったりして、どうも手が出ませんでした。ところがこの本は、上の写真を見てもわかるとおり「妖怪草紙」をテキストにして変体仮名の読み方を教えてくれるのです。これはもう、やるっきゃないじゃありませんか。

 そりゃまあ、覚えるのにちょっとした努力は必要ですけど、短い文章を解読するくらいなら、この本を見ながらがんばると、けっこういけてしまいます。覚えるコツは、めんどうがらずに自分で書いてみること。毛筆じゃなく鉛筆でいいです。人に見せるわけじゃないから下手でもかまわないのです。筆はこびを覚えると、ぐんとみぢかになって、ミミズのはったような線が急に文字に見えてくるから不思議です。

 この本の著者であるカバット先生はニューヨーク生まれのアメリカ人なんですけど、日本で生まれ育ったわたくしたちより江戸の妖怪魂をよくご存じです。日本人が忘れかけた江戸の心を外国の人に教えてもらうなんて、痛快というべきなのか、恥ずかしいというべきか微妙ですが、ここはひとつ、カバット先生の教えにしたがって、江戸の子供たちが心おどらせた妖怪草紙に親しんでみようじゃありませんか。
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記事タイトル:アダム・カバット著  柏書房  『妖怪草紙 くずし字入門』

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